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1. 中窪製茶園 和紅茶「さえあかり」の特徴
今号では京都唯一の行政村であり、宇治茶生産量の約四分の一を占める南山城村の茶農家、中窪製茶園の「さえあかり」をご紹介します。
中窪製茶園の詳細については TEA FOLKS12 の記事をご参照ください。
「さえあかり」は旧系統名を「枕崎30号」といい、鹿児島県枕崎茶業研究所で1989年に始まった「Z1」を種子親、「さえみどり」を花粉親とした交配実験の実生群中から選抜されました。
「さえあかり」は「さえみどり」よりやや遅く「やぶきた」よりやや早く芽吹く、やや早生の品種で、静岡県以南の地域での栽培に適するとされていますが、意外にも耐寒性が優れるため冷涼な京都・南山城村の気候にも適応します。
・参考:農研機構 茶種 さえあかり
いわゆるコーン香が特徴的な品種ですが、中窪製茶園の「さえあかり」はそこに花のような爽やかな香りが絡み合い、華やかな印象を醸します。
また渋みが少なく、穏やかな甘味の広がる味わいで、和紅茶の入門にも適した紅茶に仕上がっています。
2. 「さえあかり」で和紅茶をつくり始めたきっかけ
「さえあかり」は比較的新しく、鹿児島県で開発された品種であるため、京都で宇治茶として栽培しているところは珍しいと言えるでしょう。
2010年にこの品種が公表されると、中窪製茶園ではその特性に目をつけ、最も傾斜のきつい奥山という畑で栽培を開始しました。
しかしながら、実際に緑茶にするにはなかなか癖の強い品種であったようで、公表通りにはいかず、初めの頃は苦労もあったそうです。
そこで、この品種をより美味しく、上手に仕上げるために取られた手法が、被覆栽培の煎茶でした。
被覆を施すことで、甘くまろやかに仕上がり美味しくなるのだそうです。
また、良太朗さんは「さえあかり」の特徴的な細く尖った芽の形状に注目して「萎凋を施すことで、香りの優れたお茶に仕上がるのではないか。」と思い、この品種を用いた紅茶も作るようになりました。
目論見通り香りに特徴のある紅茶となりますが、良太郎さん曰く、「さらに良くなるかもしれない」との思いもあるそうで、今後も注目の外せない紅茶です。
3. 2023年の製茶予想
2023年は比較的、お茶づくりの難しい年になるのではないかと、良太朗さんは予想しています。
というのも、今年に入ってからの降水量はかなり少なく、このままいくと茶葉に含まれる水分量が少なくなってしまう可能性があるからです。
そのため、良いお茶を作るために事前の備えが必要となります。
加えて、3月に入ってからの気温の上昇も著しく、早く芽吹いてしまうのではないかという心配もあるそうです。
気温の上昇傾向については2023年に限らず、近年続く傾向であり、地球温暖化の影響が懸念されています。
さまざまな分野への影響が叫ばれる地球温暖化が、今後の国産紅茶産業にどのように関わってくるのか、油断は出来ません。
4. 映画『わだち』について
就農以前はウェブデザイナーであったという経歴を活かして、自社茶園の積極的な情報発信を手がける良太郎さんですが、2022年は更なる転機が訪れました。
LGBTを題材にして多くのグランプリを受賞した映画『カランコエの花』を制作した中川駿監督によって、良太朗さんとその奥さんをモデルとした映画『わだち』が制作されたのです。
TEA FOLKS第12便をお届けするタイミングでは、まだ一般公開はされていませんが、都会から田舎の農村へ移り住む女性の経験を描いたこの映画は、きっと多くの人に共感を抱かせる作品となっているでしょう。中窪製茶園への注目もさらに高まりそうです。
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