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News & Blog

執筆者の写真Masayuki Mahara

TEA FOLKS30 月ヶ瀬健康茶園 岩田文明さんのご紹介

TEA FOLKS(ティーフォルクス)は2カ月に一度、2茶園のプレミアム和紅茶を茶園のストーリーとともにお届けする定期便サービスです。

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各便のバックナンバー及び個別の茶葉単体販売も行っています。(在庫次第となります)


1. 月ヶ瀬健康茶園「さえみどり」の特徴


月ヶ瀬健康茶園の自然栽培「さえみどり」2023年春摘みのご紹介です。

月ヶ瀬健康茶園の詳細についてはTEA FOLKS11 をご参照ください。

「さえみどり」は鹿児島県枕崎の研究所で「やぶきた」と「あさつゆ」という旨味成分を豊富に含む緑茶用品種を掛け合わせて誕生した早生品種です。

親品種の特徴を引き継いだ「さえみどり」も旨味成分を豊富に含んでいます。

和紅茶としてはあまりメジャーな品種ではないように思われますが、緑茶においては「やぶきた」「ゆたかみどり」に次いで3番目の生産量を誇り、そのシェアは全体の約3%を占めています。(やぶきた約74%、ゆたかみどり約6%)

月ヶ瀬健康茶園では2008年に「さえみどり」を挿し木で定植し、10年ほど前からは農薬・化学肥料を一切使用しない自然栽培を始めました。

比較的高い耐寒性を示す「さえみどり」ですが、月ヶ瀬健康茶園の位置する冷涼な奈良県月ヶ瀬においては栽培可能な立地が限られているため、宮山と呼ばれる南東向きで温暖な区画で栽培されています。

この区画は複数の畑を所有する同茶園の中でも取り分けて傾斜が急な区画であるため、人が農作業をするのにはやや苦労が強いられます。

しかし冷気が溜まりにくい地形や南東向きで温暖な気候であるという点では早生品種・紅茶用品種に好意的な条件を提供しているのも事実です。

そして花崗岩をふんだんに含むこの土壌で作られたお茶は、他の土壌に比べて香りや味わいのパンチがより強いものになる傾向があるそうです。

ミネラルを豊富に含む花崗岩の土壌で10年間にわたり自然栽培された「さえみどり」は、茶樹が持つ力を遺憾無く発揮しており、品種本来の自然で優しい旨味と甘味を湛えています。

また萎凋によるグリニッシュで爽やかな香りと、発酵によって発揚した香りが見事に調和したタイミングで火入れがされており、複雑で繊細な香りを呈します。



2. 2023年の紅茶製造

2022年は月ヶ瀬健康茶園の紅茶作りにおいて、非常に困難を強いられる年となってしまいました。

というのも、乾燥工程における機械の不具合のために岩田さんの納得のいく火入れにならないものが多くなってしまいました。

そのため2022年はブレンドは確保できたものの、品種紅茶はほとんどリリースできなかったそうです。

一方で2023年春は機械の不具合を克服して品種紅茶の製造を無事に終えることができました。

しかし「やぶきた」をはじめ、全体の収量は例年に比べて減少し、また気候的には摘期の見極めが難しい年となりました。

2023年の春は4月中旬までとても暖かく、4月下旬には摘まないといけないように思われたそうです。

基本的に冷涼な気候の月ヶ瀬健康茶園では一番茶の摘期は5月頃となり、4月中に茶摘みが行われたのは過去に1度のみで、今年は非常に異例の事態となることが見込まれました。

実際には4月中旬以降の気温は一気に下がり芽の成長が鈍化したため、成長を待ちながらも芽が硬化しない程度の時期を常に伺う必要性が生じました。

その後気温が戻ってきたことと岩田さんの丁寧な観察の甲斐もあり、5月初旬には無事に摘採・製茶を終えることができたようです。

発酵止めの温度帯で紅茶の仕上がりはガラリと変化しますが、岩田さんは強く火の入ったものよりも繊細で複雑な紅茶を作りたいと考えており、今年のものはその理想に近いものとなりました。

理想を追求し続けている岩田さんは、ようやくスタートラインに立った感覚だとも語っています。



3. 月ヶ瀬健康茶園の今後の展望と新たな取り組み

月ヶ瀬健康茶園では品種茶実生園の造園に取り組んでいます。2017年から取り組む「さえみどり実生」をはじめ、「べにふうき実生」「べにひかり実生」などバラエティは多岐にわたります。

岩田さんは茶園の区画ごとの土壌による風味の違いなどに着目したお茶作りを行っていますが、これを実生で行うことで、その土地をより表現したお茶が作れると考えています。

根が横に伸びていく挿し木栽培の茶樹(品種茶)と異なり、重力に向かって垂直に根を伸ばす実生の茶樹は、土壌深くまで根を張ることが可能となり、その土地の栄養をより多く吸収できるのです。

土壌の特徴を表すことができるのは長年自然栽培を行ってきた月ヶ瀬健康茶園だからこそであり、親品種の面影を感じさせながらも、一株ごとに個性の異なる実生茶が、一体どのようなものになるのか今後がとても楽しみに感じられます。




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